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NovelJam 2018秋 観戦記第6話

分厚い束になった原稿を運び、感慨深そうに白いカゴの中に入れる。緊張感の高い会場内の空気は、その瞬間だけ和らぎ、拍手が響く。続々と各チームがフィニッシュテープを切っているのだ。

朝9時。会場はがらんとしていた。チェックアウトの準備をしたり、朝食をとりに食堂へ向かっている。

原稿が積み重なり、ボックスから溢れそうだ。ようやくここまで、辿り着いたのだ。

作品を書き終えたら、次は本にする作業だ。NovelJamでは毎回、BCCKSを用いて電子書籍の製作作業を行っている。大半の参加者が初めての操作に奮闘しながらも、画面上には本の姿を浮かび上がらせている。

13時。掛け声が講堂に響く。
3、2、1……
BCCKSの新着情報一覧に、華やかな表紙が並んでいった。

遂にNovelJam 2018秋にて、16冊の本が生まれた。3日前には存在していなかった物語が生み出され、本としてこの世に存在している。

作品の提出と販売。二つの山場は越えた。

次は、回を重ねるごとに内容が濃くなっているプレゼン大会だ。各チーム代表者が順番にスクリーンの前で、思い思いに自分たちのの作品をアピールする。
それにしても、バリエーションが豊富である。話芸だけでなく、演技、演奏(恒例になってきた?)もふんだんに盛り込まれる。表現者が思い切りよく表現をするというのは、見ている側も気持ちの良いものがある。

今回は米光一成氏、藤谷治氏、花田菜々子氏、内藤みか氏、大熊信氏の5名を当日審査員としてお迎えした。朝から始まった作品審査、そして午後のプレゼン審査を経て、午後5時に運命の結果が発表された。
まずは手短に、各賞をご紹介したい。

最優秀賞 『いえ喰ういえ』

ピースオブケイク賞 『ただいま、おかえり、また明日』

藤谷治賞 『あなたの帰る場所は』

花田菜々子賞 『リトルホーム、ラストサマー』

内藤みか賞 『みんな釘のせいだ』

米光一成賞 『【大好き】センパイを双子コーデでコロしてみた!』

特別賞(チーム賞) チーム「アンジェロと雪の女王」 藤谷燈子(著者)・太田有紀(著者)・アンジェロ(編集)・新月ゆき(デザイン)

※当該のスピーチは本動画の21:16~/51:41~

2大会ぶりに最優秀賞が選出され、会場は大いに盛り上がった。

また、直後には審査講評も始まり、受賞作以外にも言及が及んだ。講評で印象的だった指摘は特殊環境下だからこその「独自性」と「情熱」をもっと発露して欲しかったということ。その点を踏まえると、「家が動く」というシンプルな要素を見事な作品へと昇華させた「いえ喰ういえ」の最優秀賞受賞は納得のいくものだった。

長きに渡るレースは、ここで一先ず幕を下ろす。熱戦の舞台は懇親会の会場へと変わり、各々がお酒と軽食を手に、3日間の思い出を色々と語らい合う。喜びに包まれる輪が広がる一方で、呆然とした表情で俯く者もいる。この姿を見つけるとき、NovelJamにはもう一つの側面があることを痛感する。

だが、諦めるのも、安心するのもまだ早い。

NovelJamのゴールはもうひとつある。2019年2月1日(金)にアーツ千代田3331にてNovelJam 2018秋のグランプリ授賞式が開催される。大会後からの約2か月間における電子書籍の売り上げ実績、プロモーションの取り組み、読者からの評価などを踏まえた審査が行われ、グランプリが決定する。

出版後も熱い戦いは続く。そして、多くの参加者が胸を張ってグランプリ会場に足を運んで下さることを願いながら、一旦この観戦記を締めたいと思う。

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